2023/07/24 カテゴリー:コラム
by himawari-staff
自動車学校で勤務していた定年退職後再雇用された嘱託職員2名が、正職員との間の待遇差が不合理であると訴えた事案で、労働契約法20条違反の有無が争われた裁判の判決が下されました。
原告はともに元教習指導員で、60歳の定年後、嘱託社員として65歳まで勤務。業務内容は変わらなかったが、基本給は定年前の半分以下の月額7〜8万円にまで減りました。
2020年10月の一審名古屋地裁判決は、再雇用後の賃金は「生活保障の観点からも看過しがたい水準」と指摘。基本給が60%を下回る部分は不合理な格差だと認め、同社側に計約625万円の支払いを命じ、2022年3月の二審判決もこれを支持していました。
注目の2023年7月20日の最高裁判決は、「不当」として差額支払い命じた判決を破棄し審理を同高裁に差し戻しました。嘱託職員の基本給は「正社員とは異なる性質や支給目的がある」とし、詳細に検討すべきだとの判断です。
正社員と非正規社員の不合理な待遇格差を禁じた旧労働契約法20条(現パートタイム・有期雇用労働法8条)に基づき、最高裁が賃金のベースとなる基本給に関して判断したのは初めてで5人の裁判官全員一致の結論との事です。
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定年後の再雇用に対して、役職が解かれたり1年毎の更新であったりと、定年前とは違う労働条件や賃金体系を採用する企業は少なくはないと思います。
違う雇用契約になったのであればまだしも、原告の方は定年年齢の60歳になった翌日から、同じ仕事なのに基本給が半分以下に減ったそうなので、そうなると、こういった訴訟に発展しまう可能性はあったのではないかと思います。
「定年後の再雇用だから基本給は半分!」などと簡単に考えず、定年後の仕事内容の見直しやそれに伴う賃金の設定などは慎重に検討しなければなりません。また、基本給の在り方についても考える必要がありますね。
弊社の顧問先様は定年を定めている事が殆どですので、お役に立てるよう頑張りたいと思います。